相続した実家を売却する流れ|必要書類と期間

相続した実家を売却する流れ|必要書類と期間

相続した実家の売却は、「①相続登記 → ②書類の準備 → ③査定・売り方の選択 → ④売却活動・契約 → ⑤引き渡しと税金の申告」という5つのステップで進みます。全体の期間は、スムーズに進んで半年前後、相続人同士の話し合いや物件の状態によっては1年以上かかることもあります。この記事では、相続した実家を売る場合の流れを、順番に沿って具体的に解説します。

目次

相続した実家の売却|全体の流れと期間の目安

まず全体像です。相続した実家の売却は、大きく次の5ステップに分かれます。

  1. 遺産分割協議と相続登記(1〜3か月程度)…実家を誰が引き継ぐかを決め、名義を変更する
  2. 必要書類の準備(登記と並行して進められます)
  3. 査定と売り方の選択(2週間〜1か月程度)…仲介で売るか、買取で売るかを決める
  4. 売却活動〜売買契約(仲介なら3か月〜半年、買取なら数週間)
  5. 引き渡し・確定申告(売却の翌年2〜3月)

大切なのは、名義変更(相続登記)を前提としなければ売却できないという点です。「早く売りたい」という場合でも、まずは登記から着手することになります。ただし、登記を待つ間に査定や書類準備を並行して進めることは可能です。また、相続登記の見通しが立っており、相続登記されることを前提とした売買契約の締結も可能です。

ステップ1:遺産分割協議と相続登記|2024年から義務化されています

相続人が複数いる場合、まず「実家を誰の名義にするか」を全員で決める必要があります。これを遺産分割協議といい、決まった内容は遺産分割協議書(相続人全員が実印を押す書面)にまとめます。
そもそも相続人は何人いるのか、全く知らない親戚が相続人というケースも少なくありません。そのため、被相続人の生まれてからの戸籍を全て取得する事から始まります。

そのうえで、法務局に相続登記(亡くなった方から相続人への名義変更)を申請します。ただし、手続きは非常に手間で複雑なので、司法書士や弁護士に相続登記を依頼するのが一般的です。

ここで知っておきたいのが、2024年4月から相続登記が義務化されたことです。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料(行政上の罰金のようなもの)の対象になり得ます。過去の相続分もさかのぼって対象になるため、「親の代から名義を変えていない実家」も放置できません。

なお、売却前提であっても「とりあえず全員の共有名義にする」のは慎重に判断してください。共有にすると、売却時に全員の署名・実印押印・印鑑証明(引き渡しから3ヶ月以内)が必要になり、手続きが重くなりがちです。共有者のうち一人が、後になって気持ちが変わったり、売却に反対するというケースも。どこの不動産屋に依頼するのか、売れない間の管理は誰が行うのか、といった話から揉め事になるケースも少なくありません。基本的に共有名義にすることはお勧めしておりません

ちなみに、売却して代金を分ける予定なら、代表者1名の名義にして売却後に分配する「換価分割」という方法もあります(協議書の書き方に注意が必要なので、司法書士・税理士に確認するようお願いいたします)。

ステップ2:売却に必要な書類一覧|相続ならではの書類に注意

売却までに準備する主な書類は次のとおりです。

  • 相続登記に使うもの:被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書、遺産分割協議書、名寄せ帳(固定資産税評価証明書)など
    ※状況に応じて必要書類が増える場合があります
  • 売却時の所有権移転登記に使うもの:登記識別情報(いわゆる権利証)、固定資産税課税明細書、実家の図面や建築確認書類(あれば)、境界に関する資料(あれば)、物件の鍵
  • 本人確認:売主の身分証明書、実印・印鑑証明書

相続した実家で意外とつまずくのが、権利証(登記識別情報通知)が見つからないケースです。
実は、これから相続登記をするという場合は、相続登記完了時に発行されるため、見つからなくても慌てる必要はありません。
また、昔に相続登記をしてすでに名義変更が終わっているが、権利証が手元に無いというケースでも、司法書士による本人確認手続きなどで代替できるため、売却自体は可能です。

そのほか、売却時にあると良い書面として、家の図面や建築時の資料、境界に関する資料などです。売却時に買主様に渡せる情報が増えますので、売る時のプラス材料になります。
特に築年数が浅い物件ではあると嬉しいので、家の中を探して欲しいと思います。
古い家の場合は無いケースの方が圧倒的に多いです。資料が無いことを前提に現況で売買されることも多いので、そこまで気にしすぎる必要はありません。問題なく売却させていただいております。

戸籍の収集は、本籍地が転々としている場合に手間がかかります。2024年から戸籍の広域交付制度が始まり、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できるケースが増えました(コンピュータ化前の一部の戸籍などは対象外)。

ステップ3:査定と売り方の選択|仲介と買取の違い

名義変更のめどが立ったら、不動産会社に査定を依頼します。売り方は大きく2つです。

  • 仲介:不動産会社が買主を探す方法。市場価格に近い金額で売れる可能性がある一方、売却まで3か月〜半年以上かかることもあり、内覧対応や契約不適合責任(引き渡し後に欠陥が見つかった場合の売主責任)への備えが必要です。
  • 買取:不動産会社が直接買い取る方法。金額は仲介より下がる傾向がありますが、数週間で現金化でき、家財が残ったまま・古い建物のままでも引き取ってもらえる場合が多いのが特徴です。

「時間をかけてでも高く売りたい」なら仲介、「早く手放して兄弟で分けたい」「遠方で対応が難しい」なら買取、というのが基本の考え方です。再建築不可(現在の法律では建て替えができない土地)や旧耐震の建物など、買主が付きにくい物件は、最初から買取も含めて相談したほうが結果的に早いことも多いです。
買主が付きにくい物件は、仲介する場合には非常に手間がかかってしまいます。売買金額が低いため、仲介手数料も低くなってしまうという側面もモチベーションを下げてしまいます。そのため、仲介会社さんの中では、日々たくさんの物件を扱う中で、埋もれてしまったり、後回しになってしまうケースも多くあります。ところが、お客様にそのようなことをストレートに言うのは難しいですし、一旦は仲介を引き受けて、ズルズルと時間が経過してしまっていた・・・というパターンをたくさんみてきました。
空き家は空き家期間が短い方が売りやすいので、いたずらに時間が経過するのはほとんどのケースでマイナスに作用します(インフレが進んでいる好立地であれば心配は必要ありませんが)。
それなら最初から買取で相談した方が近道になるケースが多いということです。一方で、「時間はかかっても良い」「築年数が浅い」「中古住宅でもまだまだ需要のあるエリア」であれば、仲介での売り出しが有効になるケースが多いと感じています。

ステップ4:売却活動から契約・引き渡しまで

仲介の場合は、媒介契約(不動産会社への売却依頼の契約)を結び、広告・内覧対応を経て、買主と売買契約を結びます。契約から引き渡しまでは、買主の住宅ローン手続きなどを含めて1〜2か月程度が一般的です。

買取の場合は、金額に合意すればそのまま契約・決済に進むため、最短で数週間です。契約時には手付金の受け取り、決済時には残代金の受領と同時に所有権移転登記を行います。

なお、県外にお住まいで実家が北陸にある、というケースでも、書類の郵送やオンラインの仕組みを使って現地に行かずに売却を完結させることは可能です。

ステップ5:売却後の税金|3,000万円特別控除と取得費加算

実家を売って利益(譲渡所得)が出た場合、売却した翌年に確定申告が必要です。相続した実家の売却では、次の制度を知っておくと大きな差が出ることがあります。

空き家の3,000万円控除(被相続人の居住用財産の特例)

  • 空き家の3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産の特例):亡くなった方が一人で住んでいた家を相続して売る場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。一定の要件は、1981年5月31日以前に建築された家屋であること、相続から売却まで空き家であったこと、耐震改修または取り壊して売ること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があるなど、要件が厳しい制度です。
    詳細(国税庁HP):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
  • 売主自らが耐震改修リフォームをして販売するというのは、本職が建築や不動産に近い方でなければ、現実的ではありません。実質的には、「土地としてすぐに売れる需要の厚いエリア」を対象にした特別控除と考えると良いと思います。
  • 「この特例適応のために家屋を解体して売りに出したが、土地としてはなかなか売れず3年が経過しそう」というこのパターンだけは絶対に避けて欲しいです。解体してすぐに売れる土地なのかどうか、必ずご相談ください。

取得費加算の特例

  • 取得費加算の特例:相続税を納めた方が相続税の申告期限から3年以内に売却した場合、納めた相続税の一部を取得費(売却益の計算上のコスト)に加算できます。
    詳細(国税庁HP):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm
  • 親の代の取得価格が分からない古い実家では、取得費が売却額の5%とみなされて税負担が想定より大きくなることもあります。取得ひが5%とは、売却額の95%が利益とみなされて課税されてしまうことを意味するので、課税額は非常に大きいです。売却前に一度、税金の見通しを立てておくと安心です。

いずれも要件が細かく、両方を同時には使えないなどの制限もあります。この記事では制度の概要にとどめますので、具体的な適用可否や税額は、必ず税理士または税務署に確認してください

まとめ|登記を早めに、売り方は物件と事情に合わせて

相続した実家の売却は、①相続登記 → ②書類準備 → ③査定・売り方の選択 → ④売却活動・契約 → ⑤引き渡し・申告、という流れで進みます。ポイントは3つです。

  • 相続登記は義務化されています。売る・売らないが決まっていなくても、登記だけは早めに、もしくは遺産分割協議書を早めに作成を。並行して売却したり相談することも可能です。
  • 登記の際に共有名義はできれば避けた方が後の手続きが楽になります(話し合いをまとめるためには共有名義にした方が良いときもありますのでご注意ください)。
  • 高く売るなら仲介、早く確実に手放すなら買取。物件の状態とご事情に合わせて選びましょう。
  • 空き家の3,000万円特別控除には期限がありますし適用も厳しいです。税理士・税務署への確認も含めて早めに動くのが得策です。

北陸エリアの相続不動産は、地域ごとに買い手の動きが大きく異なります。迷ったら、地元の実情を知る専門家に一度相談してみてください。

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    この記事を書いた人

    株式会社ひとすじ不動産 代表取締役。宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士。訳あり物件、相続不動産、空き家の売却相談を過去300件以上お受けしています。

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